マタニティー鍼灸
長い妊娠期間とお産を乗り切るには、心と体を鍛え、体の中をエネルギーで満たしておくことが大切です。定期的な鍼灸治療で、体内の気血のめぐりを充実させることで、お母さん、そして、そのお母さんからエネルギーをもらっている赤ちゃんも元気になり、快適な妊娠期間を過ごすことができるようになります。また、鍼灸治療によって、安産になりやすいとも言われています。
鍼灸は、お薬とは違い、副作用がない安全なものです。特に、妊婦さんは、使用できるお薬に制限がありますし、鍼灸を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。妊娠中によくあるトラブルに対応することで、快適な妊娠生活を送れるようサポート致します。
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疲れやすさ、だるさ
妊娠中は、年齢に関係なく、誰でも疲れやすくなったり、だるさを感じたりします。それは、お母さんから赤ちゃんにエネルギーを常に供給しているから。言い換えれば、栄養を運ぶ血流量が増し、心臓への負担も大きくなっているからです。鍼灸治療で、体の中の活力を呼び覚まし、気と血を充実させることで、疲れの回復を助けるとともに、疲れにくい安産に向けた体作りをサポートします。
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つわり、食欲不振、胸やけ、げっぷ
多くの妊婦さんが、つわりからくる吐き気、食欲不振などのつらい症状に悩まされます。吐き気や嘔吐は、妊娠を維持する2種類のホルモンである「エストロゲン」と「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」が多量に分泌されていることが原因だと考えられています。また、ホルモンのみならず、肉体的、そして精神的両面の急激な変化による母体の一時的な不適応とも考えられています
胸やけやげっぷ(おくび)もよくみられる症状です。これは、消化器の機能が鈍くなり、食べものが長時間胃の中にとどまったり、食道下部の輪状の筋肉(括約筋)がゆるみがちになったりして、胃の内容物が食道に逆流することが原因だと考えられています。
鍼灸治療は、体内のホルモンバランスを整えること、胃や腸など消化器の働きを司る自律神経のバランスと働きを良くすること、精神的安定を図ることを得意とする治療です。そのため、つわりなどを始めとするこれらの不快な症状の改善に大変効果があると言われています。 -
腰痛、首肩こり
お腹の中で、赤ちゃんが大きくなり、お母さんの体型や姿勢が変化する結果、腰痛や首肩こりの症状に悩まれる方が多くいます。
お腹が前に突き出してくる結果、重心が後ろに傾き、そり腰に拍車がかかり、腰の筋肉の緊張状態が増すことで腰痛になります。また、骨盤が前傾になるため、尾てい骨(特に仙骨部)周辺が痛くなったりもします。
腰が後ろに反れる結果、胸元は前に出るため、肩甲骨の間も緊張状態になります。また、そのようなこれまでと違った不自然な形で頭を支えることになるため、首肩こりもひどくなりがちです。
鍼とお灸で、体の中の血の流れを良くし、これらの緊張した筋肉をほぐすことで、痛みの緩和はもちろん、体全体がかなり軽く、楽になったと実感できるでしょう。 -
足のむくみ、こむらがえり、静脈瘤
子宮が大きくなり、股関節周りの太い血管を圧迫し、下半身の血液が心臓に戻りにくくなる結果、足のむくみが生じたり、足がつったりすることが頻繁にみられます。血流量も妊娠前と比較して50%も増加、特に赤血球よりも水分量が増えるため、よりむくみやすい状況になります。また、足や膣口周囲に静脈瘤ができやすくなります。
鍼、そして特にお灸を下半身を中心に施すことで、一気に体の中の循環が良くなり、むくみの解消や静脈瘤の改善がみられます。 -
便秘、下痢、頻尿、痔
妊娠中は、ホルモンの急激な変化により、便秘や下痢を繰り返したり(特に妊娠初期)、頭痛に悩まされたりする方が多くいます。また、妊娠が進むにつれて、子宮が膀胱を圧迫したり、体内の水分量が増える結果、頻尿になる方も多くみられます。大きくなった子宮は腸も圧迫するため、便秘、そしてその結果、痔になる例も多くみられます。
鍼灸で体の循環や気の力を増すなど、体全体の調子を整えることで、これらのトラブルを解消するとともに、頻尿や便秘などによく効くと言われるツボ(特効穴)をうまく組み合わせて、症状の改善を図ります。 -
耳
特に妊娠後期に、耳が聞こえにくい、または耳に鼓膜が貼ったような状態になると訴える方が多くみられます。東洋医学では、生殖系を司るところと耳の機能を支配するところは同じとの考えに立っているため、妊娠して体内のエネルギーを消耗している妊婦さんが、耳にも症状を訴えることは、理にかなっていると考えます。そして、西洋医学的見地と東洋医学的見地の両方から、耳の治療を試みることで、このような症状の改善を図っていきます。ステロイドなどのお薬を使用できない妊婦さんに、非常に合った治療方法と言えるでしょう。
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快適な妊娠期と安産に向けて・・・
定期的な鍼灸治療を受けると、体内のエネルギーが充実し、お産の時間も短くなり、安産の可能性が高まると言われています。実際、鍼灸治療を受けた妊婦さんは、子宮頸管が程よい柔軟性を持ち、安産になりやすいという論文発表もあります。
妊婦さんの健康度合いをはかる1つの例として、お腹の位置があります。だらんと垂れ気味のお腹よりも、ピンと張ったお腹のほうが、お母さんの体も充実しているということは、感覚的に理解しやすいのではないでしょうか。これら2枚の写真は、鍼灸治療を受ける前(左写真)と後(右写真)の妊婦さんのお腹を横から撮った写真です。2枚の写真を比較してみると、治療後の方が、お腹のカーブがシャープになり、山の高さも高くなっているのが分かります。これは、お母さんの体内のエネルギーが高まり、子宮の中の赤ちゃんをよりしっかり高めの位置でホールドできている結果と考えられます。また、特に注意を促すことなく、立ってもらったものですが、腰のそり具合も解消されているのがわかると思います。
この患者様は、子宮頸管が短めで、医師からも妊娠中ずっと安静にするよう指示が出ていた患者様でした。その間、お仕事や一人目の子育てが忙しく安静がなかなか取れない状況だったのですが、鍼灸の治療をほぼ1週間に1度の頻度で取り入れてくださり、出産の前の日までお越しいただいていました。そして、毎回の健診で子宮頸管の長さに悪化もみられず、入院をすることもなく、短時間で無事かわいい女の子を出産されました。お母さんが健康で元気であれば、お腹の中の赤ちゃんも元気です。ぜひ、鍼灸で、お母さんとお腹の中の赤ちゃんの元気をサポートさせて頂ければと思います。